佐々陽太朗のチャリチャリ日記

人生いたるところに夏休みあり。佐々陽太朗の自転車日記。60歳と6ヶ月で仕事をリタイア。目指すはピンピンコロリ。死ぬまで元気なジイサンでいたい。輪行自転車旅、ポタリング、日々のトレーニングなど。

チャリンコで東北へ(10日目は酒田をポタリング、そして秀峰鳥海山をいただく遊佐町へ)

2024/04/05

 チャリンコで東北へ行く旅、10日目は鶴岡を離れ赤川沿いに下って酒田、そしてさらにその先秋田県との県境の町である遊佐町まで走った。早朝は霞がかかってうっすらとしか見えなかった鳥海山も徐々にその輪郭をハッキリと見せ始め、昼頃からはこれ以上ないほどの晴天の下、真っ白な雪をいただく姿を惜しみなく見せてくれた。

 酒田市では市内をポタリングして「最上川」「山居倉庫」「山王クラブ」「土門拳記念館」と観てまわった。そして酒田市から遊佐町へは鳥海山を眺めながらのサイクリング。遊佐町に入ってからは「丸池様・牛渡川」「十六羅漢岩」と観光名所を二カ所観てまわった。

 赤川を下って酒田へ、そして遊佐町へ至る鳥海山を眺めながらのコースは一昨日訪れた居酒屋『すたんど割烹みなぐち』のご主人から教えていただいたもの。ご主人もロードバイクで走られるとのことで、鶴岡から秋田方面に向かうならこのルートが良いと推奨いただいたのである。

 一日の走行距離は約69km。ほぼほぼ平坦な道程であった。

5:50 赤川にさしかかる。三川橋を渡って赤川の土手沿いを酒田方面に走る。早朝ならば月山の姿を見ることができるかと期待したのだが、朝靄のベールにつつまれ見えなかった。残念。

 赤川の土手沿いを鳥海山に向かって下る。肉眼では向かう先に鳥海山が聳えているのが見えるのだが、写真ではほどんど判然としない。残念。しかし、気高く聳える鳥海山に向かって走るのは気持ちが高揚する。

 赤川の土手にはフキノトウや土筆が群生している。春の野草を食べたければ取り放題。このあたりではめずらしくもなく誰も見向きもしないのだろう。

6:45 ファミリーマート庄内三川店でサンドイッチとコーヒーの朝食。

8:00 最上川にさしかかる。川向こうはるか先に鳥海山の姿が美しい。ただ、写真ではハッキリしないのが残念。それにしても最上川ってこんなに小さいのかと疑問に思う。実はこの後もう少し走って分かったのだが、これは支流(京田川)であった。

8:10 これこそが最上川。出羽大橋を渡る。

 出羽大橋を渡ると酒田市街。街の向こうに鳥海山が聳える。

8:20 山居倉庫。今も現役の農業倉庫とその建物を使った土産物売り場や食事処がある。欅並木が見事。

8:40 酒田港「みなと市場」。開店時間9:00を待って二回目の朝食「赤身中トロ丼」を食べる。

「山王クラブ」に向かう途中「上喜元」の蔵元である「酒田酒造」の前を通りがかった。

9:40 「山王クラブ」。「山王くらぶ」は港都酒田を代表する料亭で明治28年に建てられた。国の登録有形文化財となってる。「酒田傘福」と辻村寿三郎氏の人形が常設展示されていた。

「山王クラブ」に「土門拳記念館」の展示会ポスターが貼ってあり、植田正治氏の写真との企画展があることを知った。植田正治氏のファンで鳥取の大山の麓にある「植田正治写真美術館」に何度も行った私としてはこの機会を逃す手はない。もと来た道を少し戻ることになるが「土門拳記念館」に向かった。「土門拳記念館」は最上川にほど近い飯盛山公園の中にある。公園の中にはスポーツ施設や美術館もあり酒田市民の憩いの場であるようだ。美術館の前の広場から池越しに鳥海山の雄姿を観ることができる。

土門拳記念館」では「植田正治土門拳 巡り会う砂丘」という企画展が展示されていた。効果を計算して演出する植田正治の手法と非演出のリアリズムにこだわった土門拳は対照的な写真家。方向性はほぼ正反対でも、植田と土門は互いに交流があり、お互いを認め合っていたようだ。展示されていた写真には「植田正治写真美術館」で観たものも多かったが、改めて対比してみるとワクワクするほどの面白さがあった。お互いが相手をリスペクトしつつ負けまいと気を張っているのが感じられた。

 最上川をもう一度北へと渡り直す。遠くにうっすら見える山の姿は方角からしておそらく月山であろう。知らんけど。

 国道7号線を遊佐町方面へ走っていると「本間ゴルフ 酒田工場」があった。町を巡って気づいたことだが、酒田市では本間氏の勢力が絶大であるようだ。昨夜訪れた鶴岡の居酒屋「いな舟」の女将も本間ゴルフの創業者が酒田本間氏の末裔であるようなことを言っていた気がする。酔っていてよくは覚えていないけれど。

12:50 遊佐町に入る。いよいよ鳥海山が近くはっきりと見えてきた。

14:10 「丸池様」。さすがは鳥海山の麓。湧き水の透明度がすごい。

 海岸線を北上。

14:45 「十六羅漢岩」。

15:00 予定より早く旅館に到着。第一印象は古く寂れた温泉旅館という印象で、その印象ははずれてはいなかったが、素朴で温かい気遣いがありゆっくりくつろげる旅館であった。二食付きで素泊まりのビジネスホテルとさほど変わらない料金なのだから、施設設備が古いのはまったく問題ない。いや却ってそれが風情といってよく、潮騒を聴きながら過ごした一夜はすばらしいものであった。

 純和風の部屋。すぐ外は海。イソヒヨドリだろうか、良い声で鳴いている。

 15時でも、既に風呂は入れる状態であった。一番風呂で貸切状態。海を観ながら湯船につかり、疲れた体をほぐす。最高の贅沢だ。

 風呂上がりのビール。自転車旅のヨロコビのひとときがこれだ。

18:00 夕食。派手さはないが地のものを使った心づくしの料理。すべておいしくいただいた。酒は「初孫」。酒田市の蔵元「東北銘醸」の銘酒。この蔵の酒は全量生酛造り。

 ご飯はおひつに入れて持ってきて下さったが、茶碗に山盛りで4杯分たっぷりあった。今朝9時に丼をいただいてからなにも食べていなかったこともあってすべて平らげてしまった。山形の米のうまさがそうさせたのかもしれない。しかし、おそらく旅館にすれば想定外だっただろう。

 酒に酔い、苦しいほどたくさんご飯をいただいた私は、部屋に戻るやいなや潮騒につられて翌朝までぐっすり眠った。